社会貢献・国際交流

「新たな教師の学び」のためのオンライン研修コンテンツ


 令和4年度の教育公務員特例法の改正により、令和5年4月から、各教師の研修履歴を記録するとともに、この記録に基づき、教師の資質向上に関する指導助言等を行う仕組みが制度化されました。この新たな制度を推進するため、文部科学省では新たに研修受講履歴記録システム及び教員研修プラットフォームを一体的に構築し、教師が合理的かつ効率的に研修を受講・記録できる環境整備を進めています。この新たな制度の下で、教師の個別最適な学び、協働的な学びを実現するためには、プラットフォームと連携した多様で質の高い研修コンテンツを教育委員会や各教師等のニーズに合わせて充実させることが不可欠です。以上をふまえ、プラットフォームに掲載する動画コンテンツの開発に教員講習開発事業費等補助金の公募があり、本学は、文部科学省の『「新たな教師の学び」に対応したオンライン研修コンテンツ開発事業』に採択されました。
 本学は、喫緊の教育課題に対応するために4つの研修コンテンツを開発・提供し、教師の資質向上に寄与できるよう取り組んでまいります。
 なお、本HPに掲載したオンライン研修コンテンツの視聴が文部科学省が展開している「全国教員研修プラットフォーム『Plant』」とリンクしておりませんので、ご注意ください。

オンライン研修コンテンツ一覧


養護教諭・職員を対象とした緊急時対応教育 発達に課題がある児童・生徒に対する音楽療法の視点を通した関わりの解説 特定分野に特異な才能を有する子どもたちへの教育・支援 視覚障害を持つ子どもにおける運動発達の支援


〇養護教諭・職員を対象とした緊急時対応教育


 学校という場において、児童生徒の安全の確保は不可欠である。しかし、小学校における負傷・疾病発生件数は多い。また、アナフィラキシーショックでの死亡事故が学校現場で起き、アレルギー疾患の対応についても学校全体で取り組まれているが、アレルギー疾患のある子どもは増加の一途をたどっている。 救急処置には、「生命を救うために行なう救命処置」と、「けがや病気の悪化をくいとめる狭義の救急処置」いわゆる応急処置とがある(前田、2004)。学校において行う救急処置は後者がほとんどで、最初に負傷した児童生徒に接するのは一般教員の場合が多い。学校の救急処置場面では明らかな症状が見られないことが多く、受傷経過などを聞き取りながら、見えない症状の変化と受診の要否を予測するという困難さを伴う。養護教諭には、緊急時の対応について適切な対処能力が求められ、また、すべての職員が基本的な緊急時の対応に関する知識・技術を身につけ迅速な対応ができることが必要である。しかし、養護教諭および職員の緊急時の対応に対する知識、技術には個人差がある。
 本コンテンツの作成には、小児科医師、養護教諭、小児科看護師としての実務経験をもつ看護教員、小学校教諭対象心肺蘇生講習会の講師経験のある看護教員があたる。身体機能の知識をふまえて、けがや病気の際の身体内部の変化や受診の要否の判断、処置の目的や方法を解説し、実技も確認できる内容とする。このオンライン研修を通して、養護教諭および職員が、緊急時に適切な判断と対応について、症状の的確な見極めと医療機関の受診等を含めた知識・技術を身につけることにより、緊急時の適切かつ迅速な対応力育成につなげることができる。



〇発達に課題がある児童・生徒に対する音楽療法の視点を通した関わりの解説


 日本で子どもの人口が減少する中、「発達障害」と呼ばれる子どもは増え続けている。2006年に発達障害の児童数は7000人余りだったが、2019年には7万人を超えた。普通学級にも、発達に問題のある児童・生徒が多くみられるようになり、幼保・小・中・高等学校現場では、担当される先生方が大変苦労を強いられているという現状がある。 発達に問題のある児童・生徒の中には、音や音楽に過敏で、極端に嫌がる子どもも見受けられるが、音や音楽だからこそ自己を表現できるようになるという子どもも多く存在することは、これまでの臨床経験から実証されている。発達に問題があることで、対象の児童・生徒たちは家庭で、学校で、地域で生きづらさを感じている現状があるが、環境・学校・担任の働きかけ次第によって、対象の児童・生徒たちは少しだけ生きやすくなったり、コミュニケーション能力を伸ばしたりすることが可能である。
 本オンライン研修を通じて、教師が教育現場で、「音楽療法」の視野を通じて、発達に障害のある児童・生徒にどのような指導・支援をすれば有効であるかを解説していきたい。音や音楽を通して、子どもの指導・支援にあたっている教員の資質・能力をより高めることは非常に重要であり、その整備は喫緊の課題であると考えられる。



〇特定分野に特異な才能を有する子どもたちへの教育・支援


 特定分野に特異な才能を有する子どもは、知的能力に優れているといった面もあるが、同時に「同級生と会話が合わず、友だちができない」「学校の勉強がつまらなくて、教室で授業を受けるのが苦しい」「自分の中の得意と不得意の差が大きすぎてコントロールが難しい」などの困難を抱えていることが多い。人口全体の2~3%、1学級に1名程度いるといわれるが、明確な診断名等ではないこともあり、認知度は低く、孤独・孤立状態に陥りやすいのが現状である。不登校になっていたり、誰にも理解してもらえないと感じ、極端に自己肯定感が下がっていたりするケースも多くみられる。特定分野に特異な才能を有する、というのは困難を抱えていなさそうであったり、特別な学習が必要であったりと考えられ、支援がなされにくいという側面を有している。しかし、実際には子どもの話を聞く、宿題のあり方を少し変更するといった小さな工夫でも子どもの生きやすさは大きく改善する。
 こうしたことを踏まえれば、本オンライン研修を通じて特定分野に特異な才能を有する子どもの指導・支援にあたっている教員の資質・能力を向上することは非常に重要であり、その整備は喫緊の課題であると考えられる。


〇視覚障害を持つ子どもにおける運動発達の支援


 視覚障害を持つ子どもたちは運動する機会が減り、運動スキルの発達が遅れる傾向にある。しかし、視覚障害者のスキル学習に介入することでスキルの改善が見られることが報告されており、できるだけ早期に介入することで運動スキル発達の遅れをなくすことも可能である。視覚障害を持つ子どもたちが生涯にわたってスポーツに参加できるようにさせるためには、運動発達のへの理解やそのアプローチ方法に関する知識を得ることが重要である。性別や年齢、体力、スポーツ経験の有無に関わらず誰でも気軽に参加して楽しむことができるよう、ルールや用具を工夫し適合する、アダプテッドスポーツがある。近年ではアダプテッドスポーツの一つとして、視覚障害者と様々な人が一緒にできるような「ブラインドサッカー」が開発されており、ブラインドサッカーのクラブチームも現在30チームが存在する。このようなブラインドサッカーは視覚障害者が運動スキルの発達する場として、最適であり、また様々な人たちとの交流の場となると考えられる。しかしながら、このようなアダプテッドスポーツは歴史が浅いためまだ普及しておらず、特別支援に係る教員への理解が必要となる。